[糖尿病・インスリン]
糖尿病について
1️⃣ はじめに(ごあいさつ・糖尿病治療への想い)
「糖尿病かもしれない」といわれたら、どなたでもびっくりされることと思います。糖尿病にも段階があり、ごく初期であれば生活習慣の変更で済みますし、高度に悪化していた場合は、速やかに落ち着かせる治療をすれば、安定して元の生活に戻ることができる病気です。それには、まず私にご相談いただいて、どの段階の糖尿病であるのかを判断させていただきたいのです。
当院では、「患者さん一人ひとりに合った治療を、患者さんと一緒に考える」ことを大切にしています。糖尿病は、生活習慣や年齢、合併症のリスクなど、さまざまな要素が絡む病気です。だからこそ、画一的な治療ではなく、その方の生活に寄り添うオーダーメイドの医療を提供します。ここでは当院の糖尿病治療の5つの特徴をご紹介します。
2️⃣ 糖尿病とは
糖尿病とは、血液中の「血糖値」が慢性的に高い状態が続く病気です。私たちは食事をすると血糖値が上がりますが、健康な人は「インスリン」というホルモンの働きで血糖を正常に保ちます。糖尿病では、インスリンが不足したり、効きにくくなることで血糖が高いままになります。
血糖は体を動かす大切なエネルギー源ですが、増えすぎると血管の内側を傷つけ、全身の血管を硬く狭くする「動脈硬化」を進めます。これが、心臓、脳、腎臓、目などに合併症を引き起こす原因になります。
糖尿病は「血糖値を下げるだけの病気」ではなく、「血管を守り、全身を守る病気」です。早期発見と早期治療で合併症を予防し、健康な生活を続けられるよう、一緒に取り組みましょう。
3️⃣ 糖尿病の種類
糖尿病にはいくつかのタイプがあり、原因や治療方法も少しずつ異なります。
当院では、患者さん一人ひとりの状態を正しく診断し、最適な治療を一緒に考えます。
✅ 1型糖尿病
- インスリンを分泌する膵臓の細胞が自己免疫で破壊され、ほとんどインスリンが出なくなるタイプ。
- 若年での発症が多く、インスリン注射が必須です。
✅ 2型糖尿病
- 日本人の糖尿病の90%以上を占めます。
- インスリンの効きが悪くなったり、分泌が不足したりすることで発症。
- 食事・運動療法、飲み薬、注射薬など幅広い治療法があります。
✅ 妊娠糖尿病
- 妊娠中に発見される糖尿病。
- 母体と胎児の健康を守るため、血糖管理がとても大切です。
✅ その他の二次性糖尿病
- 膵炎、ホルモン異常、薬剤の影響などが原因。
糖尿病は一人ひとり背景や進行度が違います。当院ではその方に合った診断と治療を心がけています。
4️⃣ 受診をおすすめするタイミング
糖尿病は初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行してしまうことが多い病気です。以下のようなケースでは、ぜひ一度当院へご相談ください。
✅ 健診で「血糖が高め」「HbA1cが高い」と言われた
✅ 家庭血糖測定や薬局の簡易測定で高めだった
✅ のどが渇きやすい、尿の回数が増えた、体重が減ってきた
✅ 家族に糖尿病の人がいる
✅ すでに糖尿病と診断されているが、治療を続けるのが不安
当院では、院内迅速検査で血糖値・HbA1cを当日中に確認できます。少しでも気になることがあれば、早めにご相談ください。
5️⃣ 糖尿病の症状と合併症
糖尿病は「沈黙の病気」と呼ばれるほど、初期にはほとんど症状がありません。そのため知らないうちに進行し、血管を傷つけてしまいます。血糖値がかなり高くなると以下のような症状が現れることがあります。
✅ のどが渇く
✅ 尿の回数や量が増える
✅ 体重が減る
✅ 疲れやすい、だるい
✅ 目がかすむ
✅ 傷が治りにくい
合併症について
糖尿病の怖さは「合併症」にあります。血管を傷めることで、全身に深刻な障害を引き起こす可能性があります。
細い血管の合併症(細小血管障害)
- 網膜症:視力低下や失明リスク。自覚症状なく進行するため、定期的な眼底検査が大切です。
- 腎症:腎臓機能の低下。進行すると透析が必要になる場合も。
- 神経障害:しびれ、痛み、感覚低下。足の傷に気づきにくく感染・壊疽リスクも。
大きな血管の合併症(大血管障害)
- 心筋梗塞・狭心症:心臓を養う血管が詰まる。無症状のまま進行することも。
- 脳梗塞・脳出血:脳血管が詰まったり破れたりし、麻痺や言語障害など深刻な後遺症を残す場合も。
- 閉塞性動脈硬化症(ASO):足の血管が狭くなり、歩行時の痛み、潰瘍や壊疽のリスクも。
当院では、合併症を予防するために、血糖管理だけでなく、定期的な検査や専門医との連携を大切にしています。
6️⃣ 糖尿病の診断基準
糖尿病は血液検査で診断されます。以下のいずれかを満たす場合に糖尿病型と判定されますが、原則として2回以上の検査で確認します。
✅ 空腹時血糖値 126mg/dL以上
✅ 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 200mg/dL以上
✅ 随時血糖値 200mg/dL以上
✅ HbA1c 6.5%以上
糖尿病の診断には血糖値とHbA1cの両方を参考にします。HbA1cは過去1〜2か月の血糖コントロールの目安を示すため、日々の変動だけでなく全体的な管理状況を把握するのに役立ちます。
当院では、院内で迅速に血糖値とHbA1cを測定可能です。その場で結果をお伝えし、患者さんと一緒に治療方針を相談します。気になる方はいつでもお気軽にご相談ください。
7️⃣ 治療の目的
糖尿病治療のゴールは単に「血糖値を下げること」ではありません。最大の目的は、血管を守り、合併症を防ぎ、患者さんが健康で自分らしい生活を長く続けられるようにすることです。
高血糖状態を放置すると、目、腎臓、神経、心臓、脳、足など全身の血管が傷つき、失明、透析、心筋梗塞、脳卒中、足の切断といった深刻な合併症を引き起こします。これを予防するには、血糖コントロールだけでなく、血圧、脂質、体重なども総合的に管理することが大切です。
当院では、患者さんの年齢、ライフスタイル、合併症リスクを踏まえ、HbA1c目標を含む管理目標を個別に設定します。低血糖を避けつつ、続けられる治療を一緒に考えます。
8️⃣ 当院での治療方針
当院では「一人ひとりに合わせたオーダーメイドの糖尿病治療」を大切にしています。糖尿病は生活習慣、年齢、職業、家族構成、合併症リスクなどが複雑に絡む病気です。画一的な治療ではなく、患者さんごとの背景に合わせて最適な治療を一緒に考えます。
✅ 患者さんのお話をじっくり伺います
- 生活リズム、食事の好み、仕事の都合、通院の負担などをしっかりお聞きします。
✅ 続けられる治療計画を一緒に作ります
- 無理な制限や負担の大きい治療を押し付けません。
- 「できるしこ」を大切にします。
✅ 定期的なフォローと見直し
- 血糖値やHbA1cを院内で迅速検査。
- その場で結果をお伝えし、治療を調整。
患者さんと医療者が「二人三脚」で取り組む治療を目指しています。どんな小さな不安も、ぜひお気軽にご相談ください。
9️⃣ 生活習慣の改善サポート
糖尿病治療の基本は生活習慣の見直しです。当院では「無理なく続けられる」ことを大切にし、患者さん一人ひとりに合わせたサポートを行います。
✅ 食事療法
- 管理栄養士や糖尿病療養指導士が在籍し、個別相談を実施。
- 好みや生活リズムを尊重し、厳しい制限ではなく「工夫」で続けられる方法を提案。
✅ 運動療法
- 有酸素運動(ウォーキングなど)や筋トレを無理なく提案。
- 年齢や関節、心疾患リスクを考慮した安全な計画。
✅ 禁煙サポート
- 喫煙はインスリン抵抗性を高め、合併症リスクを増やします。
- 禁煙外来との連携やアドバイスも行います。
✅ ストレス管理
- ストレスは血糖値に影響します。
- 生活背景をお聞きし、無理なく対応できる方法を一緒に考えます。
当院では「できるしこ(できる範囲)」を大事にし、患者さんが安心して続けられる生活習慣改善をサポートします。
10 薬物療法
✅ メトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®):インスリン抵抗性改善
✅ SGLT2阻害薬(フォシーガ®、ジャディアンス®、スーグラ®):体重減少、心保護
✅ DPP-4阻害薬(ジャヌビア®、ネシーナ®、トラゼンタ®):食後血糖抑制
✅ GLP-1作動薬:週1回注射、体重減少、マンジャロ®対応 副作用や生活に合わせ最適提案。
11 インスリン治療
✅ BOT療法:1日1回の基礎+内服薬
✅ 強化療法:食前速効型+基礎インスリン
✅ 看護師によるマンツーマン指導 「注射が怖い」をしっかりサポート。
12 持続血糖モニタリング(リブレなど)
✅ リブレII:14日間連続血糖測定、痛み少
✅ 食事、運動、薬の効果を「見える化」
✅ 医師とデータを共有し、より良い計画を作成
✅ 看護師が装着や使い方を丁寧に指導
13 合併症の管理
✅ 血液・尿検査、HbA1c迅速検査
✅ 眼底検査、神経障害評価
✅ 小さな変化を見逃さない問診
✅ 予防型医療を重視
14 高次医療機関との連携
✅ 網膜症、腎症、神経障害など進行時の専門紹介
✅ インスリンポンプ教育入院など対応
✅ 普段は身近なクリニックで管理し、必要時は専門医へ
15 まずはお気軽にご相談ください
糖尿病は初期には自覚症状が少なく、知らないうちに進行してしまう病気です。でも、早めに気づき適切な対応を始めれば、合併症を防ぎ、健康な生活を続けることができます。
「健診で血糖値が高めと言われた」「家族に糖尿病の人がいる」「治療を続けるのが不安」「これまでの治療がうまくいかなかった」など、どんな理由でも構いません。当院では患者さん一人ひとりのお話をじっくり伺い、その方に合わせた治療方法を一緒に考えます。
当院の特徴は「血糖を下げるだけ」の医療ではなく、患者さんが自分らしく過ごせる生活を支える「伴走型医療」を目指していることです。仕事や家事、趣味や旅行など、生活の中での優先順位や価値観を大切にしながら、無理なく続けられる方法を一緒に探します。
また、当院には熊本地域糖尿病療養指導士を含むスタッフが在籍し、食事や運動、注射の自己管理、リブレなどの機器の使い方までサポートできる体制を整えています。院内で迅速検査ができるため、受診当日に血糖値やHbA1cを確認し、その場で治療方針を相談できます。
どんな小さな不安や疑問も、ぜひお気軽にご相談ください。私たちは、あなたの健康な未来を一緒に支えるパートナーであり続けたいと考えています。
カテゴリー:糖尿病・インスリン

























